ジモシルインタビュー@島田 専門店の その先へ。小さな「やりたい」を後押しするマスキングテープ専門店が目指すところ。

はじめまして。静岡のつどい記者の白倉(しらくら)です。

静岡県内全体にジモシルの活動を広めて行こうという中でお声がけいただき、自分の住むまちである島田を中心に静岡中部にて活動を始めさせていただきました。今回の記事は少し前に開催した小さなオンラインイベントのゲストさんのお話をまとめたものです。

新しい習い事を始めようとしたり、初めて行く場所を旅行しようとする時。調べてみたけれど、何となく不安で、実際に行動するまで時間が掛かったり、結局やめてしまったことってありませんか?


 そんな風に、やりたいことがあるけど、なかなか始められない。そういう時って、誰かが一緒にやってくれたら心強いのに、なんて思うことがあったかもしれません。

 今回は、ひとりで始めるのはちょっとだけ勇気がいる、小さな挑戦を始める人たちを応援して、一緒に初めの一歩を歩んでいこうとしている、ヨハク社のお話をお聞きしました。

 ヨハク社は、島田市の元スーパーだった空き店舗を改装したおしゃれな空間に、1万種類以上のマスキングテープが所狭しと並んでいる、マスキングテープ専門店です。

店主の大池祥子さんは、ヨハク社をやってく上で、3つの柱を大切にしているそうです。
ひとつめは、専門店として突き抜けたことをしていくこと。
ふたつめは、自分の今までの経験をつなげた表現をすること。
みっつめは、いろんな人が気軽にチャレンジができる、身近な場であること。

 ヨハク社には、東京や九州からもお客さんが訪れます。新型コロナが流行している今は、店内は近隣の方々が代わる代わる訪れて、ゆったりと買い物を楽しんでいます。

 2019年1月にリニューアルして広くなった店内には、クラフトボックスが設置され、様々なハンドメイドの作品が販売されています。初めて作品を置いたのがヨハク社だという方も多いのだとか。
 最近はお休みせざるをえませんが、以前は固定店舗を持たない珈琲屋さんやカレー屋さんが店内に出店したり、ハンドメイドのワークショップが開催されたりもしていました。
 店内には子供が遊ぶことが出来るスペースもあり、ゆったりと過ごすことができます。
 実は、ヨハク社の裏側には普段使っていない広いスペースがあり、今後は、そのスペースの活用も計画しているそう。祥子さんが今まで培ってきた経験を活かして、元スーパーの形を面白がってくれるアーティストの方とコラボで展覧会をしていきたいのだとか。

 そんな多様な展開をしながら、スーパーマーケットだった頃のように、幅広い年代の方に楽しんでいただけるお店を目指しているのだそう。

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 祥子さんは、お店を始めるという挑戦を決意した時、まず自分一人で始められる、身の丈に合ったやり方と、大きさで始めることを意識しました。

 祥子さんは、島田市出身。学生時代を東京で過ごし、一度地元である島田に戻ったものの、その当時は、好きではありつつも、島田に今ほどの愛着は無かったそうです。

 その後、また東京に戻り、音楽やイベントの関係の仕事をしていた中で、島田のNPO法人「クロスメディアしまだ」さんと出会い、島田でもイベント関係の仕事をするようになり、今までは知らなかった島田の魅力に気が付きはじめたそうです。

 そんな中、生まれ育ったところへ恩返しをしたいという想いが生まれ、同志の仲間達と島田でイベントスペースの運営を始めます。

 イベントの無い平日にその場所を活用しようと考えた時に、はじめは、自分には趣味も無いし、何をしたら良いのだろう、と悩んだそうです。

そして、思いついたのが、小さいころから好きだったシール集め。

 島田で仕事をしている中で、島田にはそれぞれのジャンルに特化した魅力のある個店が多いことに気が付き、そこからマスキングテープを専門に扱うという方向性を目指しました。

 ヨハク社の店舗のある場所は、昔祥子さんのお父さんがスーパーを経営していた建物。長年貸出もできないままに空き家になっていました。祥子さんに娘が産まれたこともあり、自分の家から近いその空き家であれば、娘に何かあったらすぐに家に帰れて、家族にも迷惑をかけない、という点も後押しし、空き店舗の一角を改装して小さく「マスキングテープ専門店ヨハク社」をはじめました。販売方法も、初期は自分にも家族にも負担の無いように、通販をメインにしていました。

 お客さんが増えていく中、遠路はるばる来てくれる方に、もっと満足してもらうためにラインナップを増やしたり、近所の子連れで来てくれる方に、こども達が棚にぶつからないかなんて心配しないで、ゆったり買い物をしてもらいたいと考え、祥子さんは、空き家のままになっていた元スーパーの店舗の中心部分を改装し、ヨハク社の売り場を広げる決心をします。

 店舗を拡大することで「今までのほうが良かった」と言われるかもしれません。規模を広げるということは、維持していくためのリスクは上がるでしょう。今回の店舗のリニューアルからは、祥子さんのヨハク社とそこに集うお客さんへ本気で向き合っているという「覚悟」が伝わってきます。頂が高い山であればあるほど、裾野も広がり、自然豊かで多様な生き物たちの居場所になっていくように、ヨハク社は専門店としての魅力を磨きながら、周囲の人達の小さな挑戦も一緒に育てていくのでしょう。

 祥子さんは「やってみたいけどどうしたら良いかわからない」という人、自分がイベントなどのコトを興してきた経験を生かして、始めの一歩の踏み出し方から一緒に考えて、気軽に挑戦できるようにしていきたいと言っています。また、島田をより楽しんでもらえるよう、ヨハク社に来てくれたお客さんに島田のスポットやお店を紹介しているそうです。

 ヨハク社の頂がより高く、伸びやかに突き抜けていくことは、まち中にじっくりと豊かな裾野を広げていくのでしょう。


祥子さんは「概念になりたい」と自身の向かう先を表現します。

 マスキングテープを求めて遠路はるばる来た人。ハンドメイドの作品を大切そうに陳列する人。子供たちはじゅうたんに座り込んで熱心に遊んで。ある時はコーヒー片手にくつろぐ人たちがいて。そんな多様な景色が集まっていく先を、全体としてとらえた時に言い表す言葉は「専門店」では足りません。

 カラフルで、クラシカルで、もう、何というか、「ヨハク社」であるとしか言いようがないものなのでしょう。

 お話を聴いていて、私もなんだか、どきどき、ときめいてしまいました。きっと、祥子さんは、目指す先へ、ひとりではなく、まわりのみんなと行こうとしていて、私もそのひとりに入れてもらっている気がしているからです。

 お店が広くなっても、どんなに忙しそうでも、私が訪れると、祥子さんは今までと全く変わらず「来てくれたの?うれしい、いらっしゃい!」とにっこり笑って声をかけてくれます。空間が広がっても、祥子さんとの心地よい距離感は変わりません。

ヨハク社の店名は、マスキングテープは余白を埋めるものだから、ということと、お客さんの余白時間をつかって足を運んでくれた、そのヨハクの時間が彩りのあるものであるようにという願いを込めて「ヨハク」そして、祥子さん自身が本気で取り組んでいくという意思を示すために、会社の「社」をとって名付けたそうです。

 ヨハク社の様子は、インスタグラムで公開されています。通信販売もしているそうです。日々、乙女心くすぐるマスキングテープが紹介されています。おうち時間のお供に、まずはインスタグラムをのぞいてみてはいかがでしょうか?

 そして、また安心して出かけられるようになったら、ヨハク社へいらしてくださいね。祥子さんや、スタッフさんが温かく迎え入れてくれる筈です。

※こちらの記事は静岡県島田市で実施している「グリーンドリンクスしまだ」のゲストインタビューを転記したものです。

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