第3回ジモシルインタビュー(足達 誠也 さん)@伊東市

ジモシルインタビュー第3回は、株式会社スマートステイの代表取締役である、足達聖也さんです!https://sumasute.jp/

 伊豆の空き家をリノベして、貸別荘・民泊・移住体験・合宿研修を行ったり、伊豆の不動産売買や売買仲介も行っています。現在は21棟の物件を運営されています。

 インタビューで最初に口にされたのが、「僕はどっちかっていうと引きこもりタイプ」という言葉。そんな性格でも、地域のために活動されている理由や、その熱い想い、考えを伺いました。

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【はじめに】

 僕どっちかっていうと引きこもりタイプで、目立ちたくもないし、家でゴロゴロしてたいんですよ。でも、空き家再生する人が誰もいなかったので起業しました。

【政治家志望】

 僕はもともと政治家志望で東京に出たんです。

 大学では政治の勉強をして、政治だけでは足りないと思って大学院で法律を学びました。あとは実務だと考え、自民党のある国会議員の秘書を2年半やりました。

議員の秘書になれたので、政治家を目指す僕にとってはゴールデンルートでした。国の政治の中枢を見てこれたので、普通じゃできない経験ができましたね。ある議員には、授業料をいくら払ってもこんな経験はできないぞと言われました(笑)。

【秘書としての仕事をやめるまで】

 秘書の仕事は主に「票を集めること」と「お金を集める」こと。そんな中で、パーティー券の営業をやったりもしていました。僕は永田町で働いていたのですが、不動産関係の団体に営業に行った時、ある人に怒られました。「お前、自分の地元見てみろよ。伊豆半島では空き家が増えてて、高齢化で、さらに人口も減っているじゃないか。今後どうするつもりだ?本当に社会貢献したいんだったら、東京でパーティー券売ってないで、空き家を活用して人を呼ぶビジネスやれよ。」と。

 その時は衝撃が走りましたね。「確かにそうかもしれない」と思いました。

 そして、伊豆高原の不動産会社に勤めていた父に電話して、市内の空き家状況を聞いてみたところ、「静岡県内で伊東市は空き家が最も多い部類に入るし、売り物件も多い。今後それはさらに増えていくだろう。」と言われました(※1)。

 そこで僕は、腹をくくってやるしかないと思いました。20代のうちに起業しなかったら体力的に持たないと思ったので、議員秘書をやめて、会社を立ち上げました。

(※1)伊東市空き家等対策計画 参照

https://www.city.ito.shizuoka.jp/material/files/group/21/itousiakiyatoutaisakukeikaku.pdf

空き家率は、静岡県内では熱海市に次いで多い39.3%(平成30年)。(「空き家」を「二次的住宅」、「賃貸用の住宅」、「売却用の住宅」、「その他の住宅」として定義)

【会社立ち上げ後】

 政治、法律は勉強してきましたが、空き家リフォームのノウハウも、不動産業も、それらを転用して宿をやる経験もありませんでした。それでも「やるしかない」という気持ちで、まずはやりました。

 最初は、ヤフーオークションで安くてぼろい幌付き軽トラを買い、首都圏で引っ越しをする人たちから家具・家電を集めて一か所に運びました。首都圏から伊東まで何十往復もしました。次に、集めたものを入れる物件を探すために、ホームページを作成して物件を募集しました。

 問い合わせがあった一番最初の物件は、宇佐美の海の近くで、車も入っていけないような物件。依頼主は中国の方で、競売で落札した物件でした。

「どうせこの物件を貸しても二束三文だから、民泊や貸別荘でやりたい。手伝ってくれない?」と言われました。「僕は経験が何もないですよ」と言いましたが、「それはお互い様だから、一緒に勉強していこうよ」と言ってくれました。

 その人は建物の中と外をきれいにしてくれたので、僕は家具・家電を中に運び込みました。二件目は両親の知り合いの別荘で、ハクビシンが住んでいるほど全く使っていない物件でしたが、ここもきれいにして家具・家電を運び込みました。

【初めてのお客】

 最初は、「こんな物件に誰が泊まりにくるんだろう?」と思い、お客さんが来るとは考えもしませんでした。しかし、いきなり3週間の予約が入ったんです。

 それはオランダから来た2人組でした。そのときは「まじか⁉」と思いましたね。

 あまりに驚いたので、直接会って「なんで予約してくれたの?」と聞いたら、「あなたがアップしていた写真が、とても惹かれるものがあった。ゆっくり絵を描くのに最適だと思った。」と言ってくれました。

【最低の掃除クオリティ】

 当時は、集客、接客、清掃、新規事業立ち上げ、会社の事務、全部一人でやっていました。しかし、3週間泊まってくれたお客さんには、「あなたの掃除のクオリティは最低です。すぐに掃除をしてくれる人を雇いなさい。」と言われてしまいました。(笑)

【石井さんとの出会い】

 ある日僕が富戸の物件の草取りをしていた時、近くに住んでいる石井さんという方に、「あなたどこの子?」と声をかけられました。そこで僕がやっている事業について説明したところ、「それだったら、何かあれば手伝うから、遠慮なく声をかけてちょうだい。」と言ってくれました。

 それ以来、石井さんが掃除に入ってくださるようになり、物件はピッカピカにきれいになりました。シニアの女性の方は、ホテル・旅館・貸別荘などで掃除の経験のある人が多い。石井さんもその一人でした。

 そしてその掃除のクオリティの高さもあり、お客がお客を呼び、稼働率が劇的に上がりました。さらにその噂を聞いた地元の人から、「空き家を持ってるんだけど、どうしたらいいか困っている。」という相談を受けるようになりました。それから運営する物件が増えていき、現在は21棟の貸物件を伊豆半島で運営しています。

 本当はそこまで手広くやるつもりはありませんでしたが、声をかけてくれる人が多かったので、ここまで増えました。

【足達さんの目的】

 僕の一番の目的は、伊東市の人口を増やすこと。

 「どうしたら人口が増えるのか?」という視点でビジネスをしています。

 伊豆の再生させた空き家に泊まってもらう。そこで伊豆を好きになってもらう。そうすれば移住したいと思ってくれる人は増えると考えています。単純ですね(笑)

 このサイクルを実現するために、会社で宅建業(※2)の登録もしました。移住したいと思ってくれる人がいたとき、その人に物件を紹介できるからです。そして、移住に関するワンストップサービス(※3)を確立させました。

(※2)宅地建物取引業のこと。不動産の売買・交換・賃貸借を行うことができる。

(※3)一つの場所で様々なサービスを受けられること。

【ワンストップサービスを提供したお客】

 一つ事例を紹介します。宇佐美の民泊を予約した外国のお客さんと事前メールをしている中で、「私もそっちで不動産を買って、貸別荘をやりたい。」と言われました。

 最初は、よくあるパターンの、投資だけしてあとは丸投げするパターンだなと思っていました。そこでその人に「運営どうするの?」と聞いたら、「こっちに来て、私が運営する。」と言ったんです。それでもまだ信じ切れず、「一時の熱で言っているんじゃないか?」と思っていました。しかし、彼女は日本語学校で勉強して、その後伊豆に移住するプランを立てていたのです。しかも、日本語学校の入学は既に決まっていました。彼女は、実家はシンガポールで、ドイツの大学院で音楽の勉強をしていたのですが、「過去に何回も伊豆に一人で旅行していて、伊豆が好きになった。」と言っていました。

 そこで、僕はビザや住民票取得の手続きを手伝いました。このような形でサポートしたのは、これが初めてでした。

【海外から移住する難しさ】

 この時、海外の人が日本に移住する難しさを知りました。まず、日本に住むには部屋を借りなければなりません。そして部屋を借りるには日本で銀行口座を作る必要があります。しかし、日本の住所が無ければ口座を作ることができないのです。

 このような矛盾した慣習があることで、外国の人が住民票を取りづらいのだということを、身にしみて感じました。「これじゃ移住は難しいな。」と思いました。

【外国からの移住の必要性】

 日本人の若い人たちの移住者を獲得するのは難しくなっています。まず、若い人や子どもは減っている。さらに、全自治体が移住者を募っている。それは福岡や大阪、東京でさえも同じです。そして、田舎ではなおさら、補助金を出してでも移住者を募っています。

 その政策的競争の中、伊東市が参入しても、勝つことは難しい。確かに地の利はあり、東京、大阪にも行きやすく、住環境もいいですが、大阪にも、福岡にも、首都圏にも同じような場所はあります。

 日本人移住者だけをターゲットにするのは、大して期待できないと思っています。だから、外国からの移住者を受け入れていく必要があります。どこの国から受け入れるかということには、まだ議論の余地がありますが、いずれの国にせよ、外国にターゲットを絞っていかないと、働き手担い手もいなくなります。現在、僕の運営している物件を掃除してくれるスタッフの平均年齢は、70歳を超えているんですよ。高齢にもなれば、度重なる業務は身体にも負担がかかりやすくなってしまいます。

 5年後、10年後の働き手をどう確保するのか。これは僕の業界でもそうですし、他の業界でも言えることだと思います。地域を支えてくれる人材の確保が不可欠なんです。

【人口を増やす意味】

 人が住んで、初めて税収を確保することができます。

 伊東市の歳入は、約2割を占める固定資産税が最も多く、その次は住民税が占めています(※4)。人が住まないと、税収は増えないんです。でも、日本人だけで移住政策を進めても、パイの取り合いになってしまう。保守的な考えを持ってしまうと理解しづらい部分はあるかもしれませんが、外国からの移住を募らないと厳しい現実があります。

 将来的に伊東市の人口は4万人を切るという予測がありますが(※5)、そうなると大手のチェーン店、レストランの採算は合わなくなるでしょう。これらのお店は、観光客だけではなく、地元の人も行っているから採算が合っています。そのため、人口が減ってしまうと、今の経済が回らなくなってしまうのです。まさに今、何かしなくてはなりません。

(※4)広報いとう2020.6参考

https://www.city.ito.shizuoka.jp/material/files/group/3/koho2006.pdf

歳入約246億円のうち、固定資産税が約54億円、次いで市民税が約34億円となっている。この2つで歳入の約36%になる。

(※5)伊東市まち・ひと・しごと創生 人口ビジョン・総合戦略(P36) 参考

https://www.city.ito.shizuoka.jp/material/files/group/3/itocity_jinkouvision_sougousenryaku.pdf 早ければ2050年に伊東市の人口は約4万人になり、それ以降も減少する。

【行政に求められること】

 行政に求められることは、行政にしかできないことです。

 法律には、「解釈」と「運用」があります。

 例えば、「日本は軍隊を持ちません」という法律があったとします。その法律には、軍隊とは何か?実力部隊はいいのか?という、「解釈」の余地があります。そして、施行令、通達などでその解釈を「運用」する基準を決めます。施行令などで手当される部分はありますが、結局は実務上での裁量の部分が残ります。

 この裁量部分があるということは、担当者によって運用が変わってしまうことがあります。

 例えば、担当者Aは、「ここは〇〇しなくてもいいですよ」と言っていて、今までそれで許認可をもらっていたのに、それが担当者Bになった途端、「ここには◯◯しないといけない」と言われてしまうことがありました。法律は何も変わっていないのに、担当者の裁量次第で法律の「解釈」「運用」が変わってしまったのです。

 「市民に寄り添った行政サービスを提供する」「親切、丁寧に接する」というのは表面上の話で、大前提のことです。行政に本当に求められるのは、「いかに法律を安定的に運用して、そこに差別をなくすか」ということだと思っています。

 また、「政策の立案」も行政には求められます。国では色々な省庁があり、そこで各種団体や国会議員が関わってくるため異なる部分がありますが、小さな地方自治体の場合は自分たちで法律を運用するだけでなく、政策立案もしなければなりません。コンサルなどの外部に委託するお金もありませんから、なおさらその性格は強くなっています。

 「政策の立案」のためにはまず、政策のクオリティの担保をしなければなりません。そのためには、今まで行ってきた政策を見直す必要があります。例えば、ある課題の数値が目標に達しなかった場合、そこに割いた予算に対して結果が表れていないことになります。その時、「なぜそうなったのか?」検討しなければなりません。

 役所は、その自治体で最も大きい企業である場合が多いです。戦略的にやるのか、保守的にやるのかで、その自治体の未来は全く変わることにもなるでしょう。

【若い行政職員が考えておくべきこと】

 若いうちは窓口業務をやったり、事務系の仕事が多かったりしますよね。

そのようなうちは、法律の運用の公正さをしっかり確保していくべきです。もしかしたら、先輩によって運用方法についてのアドバイスが異なることがあるかもしれません。そのような時は、「誰のため、何のためにやっているのか?」に立ち返る必要があります。法の運用には裁量の幅がありますが、それによって下す処分には、利害が必ず発生します。そしてその処分によって得る利益・不利益を被るのは、申請を出した市民です。

 法律は、所詮は人が運用するものです。意識高い系というのは、僕はあまり好きではありませんが、「誰のため」「何のため」は決して忘れてはいけません。これは議員秘書をやっていた時にもよく言われていたことです。

【2-6-2の法則】

 聞いたことがあるかもしれませんが、この世の中は、2-6-2の法則で成り立っていると言われています。

 2割が言われなくてもやる人。

 6割が言われたらやる人。

 残りの2割が言われてもやらない人です。

 上に行くには、この上位2割(言われなくてもやる人)に入らなければなりません。議員秘書をやっていた当時、代議士から耳にタコができるくらい聞かされました。ただの目立ちたがり屋は、全く使い物になりません。プラスαのことができるということが、将来の自分にとって非常に重要です。

 言われなくても、誰に対して「公平、公正、誠実」なのかは考えなくてはなりません。僕は今までの経験で、自分の出世、評価を考えている人があまりにも多いと感じました。法的義務がないのに、努力義務を半ば強制的に課してくるような人や斜視定規の法解釈・運用をする人たちです。

 言われたことをただこなして、疑問を持たずに自分の領域だけで判断することは、非常に危険です。行政職員は、薄くでもいいから、最低限の法律的思考が求められるでしょう。

 行政の処分による、利益・不利益の一切を被るのは、納税者であり、国民であり、市民です。

 僕が秘書をやっていた時、代議士からは、「常にアンテナを張っておけ。例えば、なんで電気が光ると思う?なんで信号は赤、黄、緑なのか?あらゆることに疑問を持て。全部が当たり前じゃない。理由がある。」を言われていました。

【2-6-2の8割の人】

 普通の人は、結局、自分の生活でいっぱいになってしまうんでしょうね。その人たちが世のため人のため、地域のために、お金にならないけどプライベートの時間を削ってまで何かをやるかって言われたら、それには無理があります。人それぞれその人の生活があり、それは仕方のないことです。自主性というのは、求めることは不可能で、強制すると必ず反発が起きてしまいます。だからこそ、業務の時間内で、パフォーマンスが最大化される方向で考えていかなくてはなりません。それは民間でも行政でも同じことです。求められる人材は、言われなくても資料作ったり、現地調査行ったりするような、「言われなくでもやる」人なのですが、そういう上位2割の人って、結局独立してしまうんですよね。だから、このパフォーマンス最大化の考え方はなおさら重要です。

【お金をかけなくても人は集められる】

 ハードを作る必要はなくて、莫大なお金をかけなくても人は集められると思っています。

 先ほどの事例で紹介したビザ、住民票を取る手続きは、サポートする人がいないとかなり辛い。私は先述した移住希望者の外国人にアパートの一室を貸して、住民票を取得までフォローしました。この手続きをサポートをしてあげるだけで、人は集まります。飲食店や町の看板でも、外国の人が生活しやすいように外国語も併記するよう条例、補助金を作ってサポートするだけでいいんです。

 あとはやる気次第です。信念と情熱がないと、結局お金の話に収れんしてしまいます。でも、お金が無くてもやる気と情熱さえあればできるんです。

 自治体は、補助金による政策誘導と、条例による規制、新たな税金(※6)まで作ることもできます。しかし、ビジョンがなく、目先のことしか考えていないと何もできません。

 例えば、コロナで全国的に他県に人が移動しないように呼びかけられましたよね。しかし、伊東市は4割以上が観光産業です(※7)。みんなの知り合いに観光産業に携わる人が必ずいるレベルなのに、いつまでも自粛を続けていたら、その人たちはご飯を食べられなくなってしまいます。なので、ある程度まで感染者が減ったら、コロナウイルスの予防や対応するための体制確立した上で、人を呼ぶことに舵を切っていくべきだと思います。現役世代は、商売ができなければ、生きていくことができませんから。

(※6)地方税法第五条市町村税は、普通税及び目的税とする。

同条第7項:市町村は、第四項及び第五項に規定するもの並びに前項各号に掲げるものを除くほか、別に税目を起こして、目的税を課することができる。

(※7)2015年国勢調査結果 産業別就業者数 参照

https://www.city.ito.shizuoka.jp/material/files/group/6/273kokuchokekkagaiyo.pdf

官公庁による観光産業のイメージhttps://www.mlit.go.jp/common/000226408.pdf(旅行業と宿泊業を中心として、運輸業、飲食業、製造業等にまでまたがる幅の広い産業分野)を観光業として定義すると、その割合は半分を超える。宿泊、サービス、小売業で考えると、4割以上になる。

【利益を度外視したビジネス】

 僕は有り難いことに住む家もあるし、贅沢しようともあまり思いません。利益のことなんて、全く考えていないんですよ。自分自身経営者に向いてないと自覚しています。(笑)

ビジネスをする人の多くは、事業計画書作って、利益とか給料の計算をする人が普通なんですよね。結果がどうしても先にきてしまう。

 僕はそれよりも「過程」が大切だと思っています。どうすれば人口を増やせるか。いかにして空き家を再生させて、お客様を満足させるか。利益という結果を先に計算しなくても、信念に基づいてその過程を愚直なまでにやれば結果が出て、利益も勝手に出てくるはずです。

 最初は自転車操業でした。本当にお金が無くて、消費者金融からしかお金を借りることができませんでした。金利は約14%と本当に高く、それも限度いっぱいまで借りました。スタートアップの企業は担保がないので、金融機関はお金を貸してくれないんですよね。特に地方だと、不動産担保がないと貸してくれない。だから消費者金融で借りざるを得ませんでした。三期目でやっと不動産の売買で利益が出て、お金を返して、不動産も購入して担保ができ、銀行からお金を借りることができました。

 僕の会社は社会起業的な側面があります。空き家対策、人の呼び込み、移住体験などは全て、地域のためを思ってやっています。その分、割に合わないことも多々あります。

 しかし、空き家を再生させて、そこに価値を与えて、そこで泊まってくれるお客さんが喜ぶことによって、初めて結果が得られると思っています。先に利回りを計算するような人は、僕とは合いません。実際、僕のもとを離れていく物件の持ち主もいました。

【地域の人たちの支え】

 ビジネスをするとき、地域の人たちが見えないところで支えてくれています。僕の見えないところでお客さんの大きな荷物を運ぶのを手伝ってくださったり、道案内したり、車で送ったりしてくれている。自分では見えていなくても、地域でアンテナを張っていると、そのようなことが分かります。この地域があって初めてビジネスができる。したがって、そこに住む人たちにはできるだけ配慮しなくてはなりません。利回りとかお金のことばかり考えているとそれがないがしろになり、足元から崩れていきます。特にこのような地方では、地域の人の声にしっかり耳を傾けて、地域の人の協力に感謝しながらやっていかないと、絶対に長続きしません。

 結局どこまで行っても、地域のためを思う信念と情熱が必要です。

【今後やっていきたいこと】

 僕は新しい事業したいと思っているんですよ。貸別荘や民泊の事業とは離れて、日本語学校をやりたいんです。

 それともう一つ、首都圏に住んでいる若い人に、無料で伊豆の空き家を譲渡する仕組みを作りたいと思っています。「首都圏の若者」×「空き家提供」×「移住」。この取組を計画しています。

 これらをやりたいと思った理由は、僕が苦労したからです。会社立ち上げるとき、お金も不動産も何の資産もなかったから、銀行から借り入れができなかった経験がある。だから若い人には、何でもいいから資産を持ってもらって、移住してきてもらって、それを自分で改装してもいいし、それを担保にして借入をして新しい商売を始めてもいい。新しいことを始めるには、資金面での支援とともに行政との関わりも必要になって来るので、そこをサポートしていきたいと思っています。

【若者たちが抱く幻想】

 今回のコロナで、若者たちの幻想のようなものが解ければいいなと思っています。「都会に行けば生活が安定して、好きな時に飲みに行けて、遊べて…」というのは幻想です。どんなに頑張っても、年収は1000万~1500万円。それで何十年ものローンを組んで、何千万ものタワーマンション購入して。それで本当に大丈夫なの?と思います。

 大手デベロッパーなどが、タワーマンションに対する幻想を抱かせるような広告を作ったのが一つの原因ですが、その幻想にとらわれている若者たちがかわいそうに思います。何千万もの物件なんて、お金がある人たちが別荘として持っていればいい物。普通の若い人が買ってはダメでしょう。今回のコロナでその考え方が変わってくれればいいと思っていますが、そんな簡単には変わらないとも思っています。テレワークもなくなり、通勤ラッシュも元に戻るでしょう。でも、そこに一石を投じたいと思っています。

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【インタビューを終えて】

政治と法律を学ばれていたということもあり、知識の豊富さと論理的思考に刺激を受けました。行政職員である自分も常に疑問を持つ姿勢を持たなければならないと感じました。

 どれだけ勉強しても、経験を積んでも、自分が把握しきれていないことは必ず存在します。その時に前例を踏襲して思考停止状態で法律を運用するのか、疑問をもって自分で調べるのかで大きな差があるんだと思いました。自分が知っているかどうか、そして疑問を追求するかどうかで法律の運用が変わり、そしてその影響を受けるのは市民です。「なぜ電気は光るのか?なぜ信号の色は赤黄緑なのか?」そういう何気ない部分でも、常に疑問を持つ姿勢を養っていかなければならないんだと思いました。

 また、「利益を度外視したビジネス」という考え方は、なかなかできない考え方だなと感じました。しかし、足達さんがおっしゃっていたように、利益を度外視するからこそ長続きするんだと思います。利益を考えないからこそ、人に対する行動の質が金銭面でのつながりではなく、感情的なつながりになる。そしてそのつながりは非常に強固で、困った時には助け合えるような深い絆になる。だからまわりまわってそれが結果につながるのではないかと思いました。

 常に疑問を持つ姿勢、そして「誰のため」「何のため」を考える意識。利益を度外視した行動。これは自分も日々意識していかなければならないことです。

 足達聖也さん、ありがとうございました!!

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